こんにちは!NEUTRALのAmiです。
NEUTRALでは、ライフコーチングの一環として、海外移住についてのご相談を承っております。
その中で、最近特に多いお問い合わせが、「オランダへの教育移住」についてです。
オランダは、子供の幸福度ランキングで1位に輝いた国ということもあり、オランダで教育を受けさせたいと考えている方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、元公立高校教師で、オランダのデン・ハーグへ移住し、現在、日本語教室「Eduble」を運営されている三島菜央さんへ、オランダの教育について聞いてみました。
菜央さんは、6歳の娘さんがいらっしゃるので、教育者と保護者、両方の視点からお話をお伺いしたいと思います。(2021年時点)
オランダ移住した理由
Ami: さっそくですが、なぜオランダ移住をしたんですか?
菜央: 日本で約8年間、大阪の公立高校で英語の教師をしていて、その後、2019年にオランダへ移住しました。
菜央: オランダに移住した理由は、日本の教育は生徒にとっても現場にとっても、大変だと言われている課題がたくさんあって、自分がその現場で何かを変えたいと思っても、経験不足と知識不足、あと一緒にやっていく仲間がいなかったんですよね。
菜央: 自分が不器用で繋がり方を知らなかったという部分もありますし、繋がりたいと思っても、仕事がすごく忙しくて、職場の外で繋がりを作るという視点がなかなか持てなくて。
菜央: 自分の中で、教育というものを広く見る視野が足りない、そんな状態で何かを変えていくことは難しいなと思ったので、海外に視野を広げて、「教育」というものを見たいと思って。
菜央: その当時オランダは、2年連続、世界一子供が幸せな国としてランキングされていたので、「ほんまか?!」と。笑
菜央: 確かめに行かないと、その数字は分からないから、なぜ子供の幸福度が1位なのかを知りたかった、というのが理由ですね。
Ami: サラッと言われましたけど、大変な決断ですよね。学校を辞めて、移住をしようと。旦那さんも高校の教師だったんですよね?
菜央: そうですね、夫は社会科の教師でした。確かに公務員を辞める人はなかなかいないですよね。
菜央: でも教育が好きだからこそ、もっと視野を広げたいと思って決めましたね。
オランダの教育制度
インタビューの途中ですが、ここでオランダの教育制度について、簡単に説明します。
- 初頭教育:4〜11歳(義務教育は5歳から)
- 中等教育:4〜6年間
- 高等教育:1〜7年以上(大学含む)
日本の教育制度とは少し異なり、中等教育以降は、やりたいことや学力レベルによって、年数が異なります。
実際のオランダ教育は?
Ami: オランダの教育と言うと、「イエナプラン*」を挙げる方が多いと思いますが、実際はどうですか?
菜央: 実際は、オランダ人の保護者の方に、「イエナプラン」って言っても、「ん?」みたいな。笑
菜央: 「イエナプランって何?」みたいな感じだし、「イエナプラン」を実践する学校は、オランダの全学校の3%程度ぐらいしかないと言われていますね。
菜央: 日本で、オランダの教育についてあまり情報がないところに、熱心にオランダの教育について研究されている方が、続けて(イエナプランについての)本を出されているので、それが目に付くようになったんだと思います。
菜央: 私自身は、オランダは、様々な人種・色んな考えを持つ人たちがたくさんいて、その考え方を認め合う国だと思っているので、教育にも色々なスタイルがあって、それがオランダ教育の良いところだと思います。
菜央: 日本とオランダの教育は、全く異なるもので、知れば知るほど全然違うなと思いますね。
菜央: 良いか悪いかではなく、オランダは、大人たちが自分の人生を大切にしていると言うか、子供のためにという気持ちが、自分の人生の枠を超えていかないんですよね。
菜央: 日本だと例えば、子供のために残業するとか、子供のためにもっと働くということがあると思うんですけど、オランダではそこの線引きを徹底している方が結構多くて。
菜央: その土壌が違うってことを前提とすると、(オランダ移住前に)日本で得た情報はけっこうキラキラしてたかなと思いますね。
菜央: あと、オランダの教育を見て、なるほどと思ったのは、留年とか飛び級が許されている国なんですけど、飛び越えなければいけないハードルは、すごく低めに設定されていると思います。
Ami: それは学力ですか?
菜央: そうです、学力です。低めに設定しておくと、飛び越えられる子供がたくさんいるんですよ。でも日本のような高い位置で設定されていると、自分はできないんだと思い込んじゃう子供が多く出てきちゃいますよね。
菜央: ハードルは低い位置に設定されているんですけど、それは学力が低いと言うよりは、学び方が違うので、PISA(国際学力調査)のような学力調査では日本の方が上ですけど、オランダが特別悪い水準ではないんですよね。
菜央: あと、Gifted School(ギフテッド・スクール)と呼ばれる、IQが非常に高い子供や、特殊な能力を持つ子供が通う学校もあって、一般的な学校にいると、全部分かっちゃうから面白くないみたいな子供を取り出してあげて、その子のレベルに合わせた学校に通わせてあげるってことがオランダではよくあるんですけど。
菜央: 日本だとその様な学校は無くて、みんな同じ教室の中で、よくできるんだったら常に1番取り続けたらいいじゃんみたいな感じになっちゃうんですけど。
菜央: オランダは、めちゃくちゃできる子供を育ててあげる一方で、あまりできない子供にも手厚くしてあげている感じかなと思います。
菜央: その仕組みが日本には無いので、オランダに来たときは、全然違うなという印象でした。
オランダは世界一子供が幸せな国?
Ami: オランダは世界一子供が幸せな国と言われていますが、それはどう感じますか?
菜央: そうですね、幸せだろうなと思いますね。笑
菜央: それはやっぱり、宿題が全く無い訳ではないんですけど、宿題が少ないので、子供のうちは、子供でいさせてあげることが、最も人間力を磨くことにつながる、という考え方なので。
菜央: ただ、中学・高校になると、日本のスタイルに近くなってくるんですね。お勉強学校に入ると、宿題も多いし、勉強も大変になるし。
菜央: だから、小学校の間が幸せ感をすごく享受できるので、「幸せ」とは何かと言うことを知った子供が、自分のレベルや適性に応じて、社会に出ていくという、この幸せを享受する8年間が人々の心にうまく作用している部分があるんじゃないかなとすごく思います。
Ami: じゃあその8年間の間に、自分が楽しいこととか、向いていることを見つけて、例えば勉強が好きだったら、そういう学校に行くという感じですか?
菜央: そうですね。でも、たった12歳とかなので、自分が振り返ってもあの頃何がしたかったかなんて覚えてないですよね。笑
菜央: でもその後に、やり直しができるルートも細かく用意されているんですよね。もちろん、時間も掛かるし、努力も必要なんですけど。
菜央: 私が日本の大学とかを思い出すと、自分の専攻を変えることは難しいですよね。
菜央: 高校3年生のときに本当にやりたかったことか分からないことで大学に行き、例えば文学部に行き、全然文学好きじゃなかったってなったときに、学部を変えることってほぼほぼ難しいんですよ。
菜央: それを柔軟にしている大学も現れてきてはいるんですけど、でも全然まだメジャーじゃないんですよね。
菜央: でもオランダの大学と聞くと、そんなん普通にあるし、なんなら大学を変えることもいっぱいあるよと、聞きますね。
菜央: とにかく人の心は変わりやすいというか、自分を見つけるのに掛かる時間って人によって違うじゃないですか。
菜央: なので、それに応じた道を用意しておくことが、当たり前の社会なんだなと思いました。
Ami: 大学進学率はそんなに高くないんですよね?
菜央: そうですね。15〜25%ぐらいと言われています。
Ami: じゃあやっぱり本当に勉強したいと思う人が行くって感じなんですね。
菜央: そうですね。でも私のイメージ的には、大学(university)に行く人たちっていうのは、日本の一般的な大学生より遥かに勉強してるので、それぐらいの数になるのかなと思います。
Ami: お金払えば行けるなんてことはないんですね。
菜央: ないですね。実力が伴ってないと難しいですね。
ちょっと驚く?オランダの教育方針
菜央: 日本人だと、みんなを一定のレベルまで持ち上げてほしい、と思っている方が多いと思うんですけど、私がオランダの先生と話して、これは日本人が聞くとけっこうショックだろうなと思うことは、「人には限界があるから」ということをあっさり仰るんですね。
菜央: 例えば、100点満点のテストで、算数が20点しか取れない子供は、先生によっては、「まあ100点取るのは無理でしょ」。
菜央: 「テストで100点取るためにもっと勉強しなさい」ということが、その子供のためになっているかという視点なので、切り捨てるというか、20点取れる子供は、まあ50点取れるようになればいいんじゃないですか、みたいな考え方ですよね。
菜央: なので、保護者が「そんなこと言わずに、100点取れるように頑張ってください。」と学校側に言うことは、学校からすると「ん〜?」みたいな、「それはこの子にとって必要ですか?」みたいになります。
菜央: 身の丈を知れ、じゃないですけど、そういった発言を学校の先生がされることはよくありますね。みんなのお尻を叩いてここまで行くぞとか、みんなで頑張ろうみたいな雰囲気は感じないですね。
Ami: みんなが60点取れるような教育をするのではなくて、例えば、算数で20点しか取れない子供でも、スポーツができればそこを伸ばしてあげようっていうような教育なんですね?
菜央: そうですね。良いところに目を付けて、伸ばしてあげる。もちろん、ある一定のレベルまではクリアしないといけないけど、できないところに目を付けて、できてないからもっともっと、みたいなことはしないとはっきり仰る先生もいますね。
学校教育と家庭教育
菜央: 親としては、学校に子供を預けて、やってくださいと言うのは簡単じゃないですか。
菜央: でもオランダの保護者の方は、要は「家庭教育」で、もちろん学校も必要だけど、それはあくまでも基礎的な学力とか社会性を身につけるためだけの場所、という認識を持っているような気がします。
菜央: なので、学校にめちゃくちゃ期待することもしないですね。日本だと、どちらかと言うと、学校に全部やってもらいたい、部活もやってもらいたい、という感じだけど、オランダの保護者はもう少しlaid-back(のんびり)してるというか、要は家庭教育だからという意識は感じますね。
菜央さんが考えるオランダ教育の問題点とは?
Ami: 良いことばかりがクローズアップされがちですが、菜央さんから見て、オランダ教育の問題点ってありますか?
菜央: やっぱり言語の問題はすごく大きいと思いますね。
菜央: オランダの学校の学習言語は当然オランダ語なので、日本人も含めて移民の子供たちが小学校の段階で入ってくると、教員の負担になって、教員不足にも繋がっているところがありますね。
菜央: それは、言葉が通じないから適切な指導ができない、ということもありますし、小学校教員の賃金が低いことによる、成り手の少なさによる学校の手薄さという問題点もあります。
菜央: なので、日本から来る場合は、学習言語がオランダ語だったとしても、子供なんか言語なんてすぐ覚えるでしょと思われる方もいらっしゃると思いますけど、私は英語の教師なので、言語の大切さ、言語がどれだけ思考と繋がっているか。
菜央: 私たちって何かを伝えようとしたときに、一旦頭の中で考えてますよね。その時の言語は何語なのか、そこで考えることができるだけの語彙を持っていなければ、思考もそこで止まるんですよね。
菜央: あとは、学力差も問題点になってますね。ハードルは低く設定されているけど、そのハードルがギリギリ超えられる程度の学力の子供には、どんな社会が待っているのか、社会で活躍できる場があるのか、というところも問題点としてありますね。
菜央さんが考えるより良い教育とは?
Ami: 菜央さんにとって、より良い教育とはどんなものですか?
菜央: 「より良い」と言うのは、「みんなが幸せである」ということですね。
菜央: 「生きにくさ」などが最小限に抑えられていて、教師も生徒側も、ハッピーに学校に行けるというか、比較されたり、熾烈な受験戦争などで自分が削ぎ取られる様な要素が最小限に抑えられていて、誰もがその人らしく生きられる安心・安全な場所が学校であってほしいなと思っていて、そのヒントをここで探している感じですね。
さて、いかがでしたでしょうか?
オランダの教育については、日本で出版されている本だったり、ブログ記事などである程度は知ることができると思いますが、やはり良いところばかりがクローズアップされている傾向があるため、メリット・デメリットを知るキッカケになればと思い、このブログを書きました。
菜央さんは、オランダのデン・ハーグという街で、「Eduble」という日本語教室を運営されています。
また、noteでもブログを運営されているので、興味のある方は是非ご覧ください。
それでは、最後までご覧いただきありがとうございました。
Ami